不法就労助長罪を避けるための在留カード確認方法

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「知らなかった」では済まされない不法就労助長罪の重い罰則

外国人を雇用する企業にとって、最も警戒すべきリスクの一つが「不法就労助長罪」への抵触です。
この罪は、不法就労者であることを知りながら雇用した場合はもちろん、過失によって確認を怠った場合も処罰の対象となります。

2026年現在の法律では、この罪に対する罰則が非常に強化されており、企業側の社会的責任がかつてないほど厳しく問われています。
具体的には、5年以下の懲役や500万円以下の罰金が科される可能性があり、法人に対してはさらに多額の罰金が設定されています。

罰則の重さ以上に企業を苦しめるのが、一度この罪に問われると、その後数年間にわたって新たな外国人の受け入れが事実上不可能になるという点です。
深刻な人手不足の中で採用ルートが断たれることは、事業の継続そのものを危うくする死活問題となり得ます。

また、不法就労を助長した企業として実名が公表されれば、取引先や金融機関からの信用も失墜してしまいます。
コンプライアンスを重視する現代のビジネスシーンにおいて、こうした行政処分は経営に致命的なダメージを与えることになります。

したがって、採用時に「在留カードを見せてもらった」という形式的な確認だけで済ませるのは、極めて危険な判断と言えます。
そのカードが本物であるか、そして自社の業務内容に合致しているかを、確固たる基準を持って見極める必要があります。

不法就労を未然に防ぐことは、外国人本人を守るだけでなく、自社の経営基盤を強固に守るための不可欠な投資であると捉えるべきです。

在留カードの原本を目視で精査する際の5つのチェックポイント

在留カードの確認において最も基本となるのは、コピーや写真データではなく、必ず「原本」を手に取って確認することです。
近年の偽造カードは非常に精巧に作られており、スマートフォンの画面越しやモノクロのコピーでは、違和感を見抜くことが極めて困難だからです。

まず注目すべきは、カードを傾けた際の色調の変化や、偽造防止のためのホログラムの動きです。
正規のカードであれば、左端のホログラムが傾きに応じて色が変化し、特定の文字が浮かび上がるように設計されています。

次に、カードの表面にある「MOJ」の透かし文字が、適切な光の角度で見えるかどうかを慎重に確認してください。
偽造品の中には、この透かしが印刷だけで表現されていたり、全く存在しなかったりするケースが散見されます。

また、カード表面の印刷の質も重要な判断材料となります。
文字に不自然なかすれや滲みがないか、あるいは顔写真と背景の境界線がガタガタになっていないかを細部までチェックします。

さらに、カードに内蔵されているICチップの盛り上がりを指で触れて確認することも有効な手段です。
偽造品の中にはICチップがただのシールであったり、物理的に埋め込まれていなかったりするものも存在します。

こうした目視による確認は、担当者の経験に頼る部分もありますが、基本的な仕様を知っているだけで多くのリスクを回避できます。
少しでも「手触りが違う」「色が不自然だ」と感じた場合は、そこで手続きを止め、さらなる調査を行う勇気が必要です。

デジタルツールを活用した有効性の最終確認と記録の保存

目視による確認を補完し、より確実性を高めるためには、公的なデジタルツールの活用が欠かせません。
出入国在留管理庁が提供している「在留カード等番号失効情報照会」サービスは、インターネット上で誰でも利用可能です。

このサイトにカード番号と有効期限を入力するだけで、そのカードが現在有効なものか、あるいは既に失効しているかを即座に判定できます。
たとえ見た目が完璧な偽造カードであっても、存在しない番号や失効済みの番号であれば、このシステムで弾くことができます。

さらに2026年現在、多くの企業が導入しているのが、スマートフォンでICチップを直接読み取る「在留カード読取アプリ」です。
このアプリを使えば、カード表面の印字データとICチップ内の記録が一致しているかどうかを、わずか数秒で確認できます。

ICチップ内のデータは改ざんが極めて困難であるため、ここでの一致が確認できれば、偽造カードである可能性をほぼ排除できます。
逆に、アプリで読み取れない、あるいは読み取った写真と表面の写真が異なる場合は、迷わず専門家や当局へ相談すべき事案です。

また、こうした確認を行ったという事実を、客観的な証拠として社内に残しておくこともコンプライアンス上重要です。
確認日時、担当者名、そしてアプリの判定結果などを記録しておくことで、万が一の際にも「過失がなかったこと」を証明する材料になります。

デジタルツールをルーチンとして組み込むことで、担当者の心理的な負担を軽減しつつ、より強固な管理体制を築くことが可能になります。

業務内容と在留資格の整合性を論理的に判断する視点

カードの有効性を確認した後に、次に行うべきは「その人が自社で予定している業務に従事できるか」という実質的な判断です。
在留カードが本物であっても、その資格で認められていない仕事に従事させれば、それは立派な不法就労となります。

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ人が、現場の単純作業に従事することは原則として認められません。
カードの「就労制限の有無」欄に「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載されている場合は、その資格の定義を再確認する必要があります。

また、留学生や家族滞在者が持つ「資格外活動許可」についても、時間制限のルールを厳格に守らなければなりません。
週28時間以内という制限は、自社での勤務時間だけでなく、他社との掛け持ちを含めた総時間であることに注意が必要です。

「少しの時間なら大丈夫だろう」という安易な判断が、企業としての法的責任を問われるきっかけになります。
特に派遣社員やアルバイトを採用する際は、本人が他にどのような仕事をどの程度しているかを、書面で申告させる体制を整えましょう。

加えて、特定の職種に限定された「特定技能」や活動内容が多岐にわたる「特定活動」の場合は、指定書と呼ばれる別紙を確認することが必須です。
パスポートに貼付されている指定書には、その人が従事できる具体的な会社名や職種が明記されています。

このように、在留カードの確認とは、単なる「身分証明」のチェックではなく、その雇用契約が法的に有効であるかを検証する高度な法務作業です。

定期的な再確認と全社的なリスク意識の共有

採用時の確認が完璧であっても、雇用継続中に在留期限が切れてしまえば、その瞬間に不法就労の状態が発生します。
これを防ぐためには、在留期限の数ヶ月前からアラートを出す仕組みを構築し、全社的に管理を徹底しなければなりません。

特に注意が必要なのは、社員が個人的に在留資格の変更や更新を行い、その結果を会社に報告し忘れているようなケースです。
新しい在留カードを受け取った際は、再度原本を確認し、就労条件に変更がないかを改めて精査するプロセスを徹底してください。

また、不法就労のリスクは人事担当者だけでなく、現場の管理職や店長なども共有しておくべき知識です。
現場で急な増員が必要になった際に、確認を怠ったまま新しい外国人を手伝わせるといった事態は、多くの現場で起きがちな盲点です。

「誰が確認の最終責任を負うのか」というルールを明確にし、必要であれば外部の専門家である行政書士と連携してチェック体制を磨き上げましょう。
法改正や新しい偽造の手口など、最新の情報に常にアンテナを張り、管理手法をアップデートし続けることが重要です。

適切な確認プロセスは、一見すると手間がかかるように見えますが、不測の事態で受ける甚大な損失を考えれば、極めて合理的な対策です。
外国人社員がその専門性を安心して発揮し、企業が健全に成長し続けるために、妥協のない在留管理体制を築いていきましょう。


社内の管理体制に不安がある、あるいはより専門的な視点での二重チェックを導入したいとお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

本間 隆裕のアバター 本間 隆裕 行政書士

シキサイ行政書士事務所 代表。
外国人の在留資格(VISA)申請を専門に、就労ビザ、特定技能ビザ、興行ビザ、永住許可申請などのサポートを行っています。

行政書士事務所・行政書士法人にて計7年間勤務し、700件以上の在留資格関連案件に携わってきました。
企業と外国人双方の立場を理解したうえで、制度だけに頼らない、実情に即したサポートを心がけています。

外国人が日本で安心して働き、生活できる環境づくりに貢献することを大切にしています。

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