興行ビザで招聘するスポーツ選手やモデルの報酬と実績に関する判断軸

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興行ビザ申請において実績と報酬のバランスが重視される背景

プロのスポーツ選手やファッションモデルを海外から招聘する際に必要となる「興行」の在留資格は、他の就労ビザとは異なる独自の審査基準を持っています。
一般的な事務職や技術職のビザでは学歴や職歴が主な評価対象となりますが、興行ビザではその人物が「プロとしてどれだけの実績があるか」という点が厳しく問われます。

出入国在留管理局が実績を細かくチェックする理由は、興行という活動が日本の文化や経済に寄与するものであることを確認するためです。
単に「外国人を呼びたい」という企業の意向だけでは不十分であり、その人物が日本で活動することの妥当性を客観的な指標で示す必要があります。

また、実績と並んで極めて重要な要素となるのが、日本滞在中に支払われる報酬の金額が適切であるかどうかという点です。
これは、日本国内で同等の活動を行う日本人と同等額以上の報酬を支払うことで、外国人材の不当な低賃金労働を防ぐという目的があります。

もし、実績に見合わないほど低い報酬設定で申請を行った場合、それはプロとしての活動ではなく実態は単純労働ではないかと疑われる要因になります。
逆に、実績が不明確な状態で高額な報酬を提示しても、その活動の信憑性が疑われ、結果として不許可のリスクが高まってしまいます。

このように、興行ビザの審査では「過去の確固たる実績」と「将来支払われる正当な報酬」が、表裏一体の判断軸として機能していることを理解しなければなりません。
まずは、招聘しようとしている人材が、日本の法務省令が定める「興行」の基準に合致しているかどうかを冷静に分析することがスタートラインとなります。

優れた実績を客観的に証明するために求められる資料の考え方

スポーツ選手であれば、国際的な大会での入賞歴や、所属していたチームでの出場記録、さらには公的な競技団体からの証明書などが実績の根拠となります。
ファッションモデルの場合であれば、有名な雑誌への掲載実績や、著名なブランドのショーに出演した際の写真、広告契約の履歴などが具体的な資料として挙げられます。

こうした実績の証明において注意すべきなのは、本人の主観的な「有名である」という主張は、審査においてほとんど考慮されないという現実です。
審査官は、提出された新聞記事、雑誌の切り抜き、公式なウェブサイトのプリントアウトなど、誰が見ても明らかな「形に残る証拠」のみを評価します。

特に世界的に有名な賞を受賞しているようなケースを除き、実績の証明は複数の資料を組み合わせて多角的に行うのが実務上の定石です。
例えば、本人のプロフィール資料だけでなく、過去に活動していた国でのメディア露出を時系列で整理し、その影響力の大きさを可視化する作業が必要になります。

また、実績を証明する資料が外国語で作成されている場合は、必ず正確な日本語訳または英語訳を添付しなければならず、この翻訳の質も審査の理解度に影響を与えます。
専門用語が多いスポーツやファッションの分野では、単なる直訳ではなく、その実績が日本でいうどの程度のレベルに相当するのかを補足説明することが有効です。

もし、過去の実績が十分でないと判断された場合、より詳細な活動計画を提示して補う必要があります。
しかし、原則として興行ビザは「すでにプロとして確立された地位にあること」を前提としているため、実績不足を言葉だけでカバーするのは極めて困難です。

日本人と同等額以上の報酬設定が審査に与える決定的な影響

興行ビザの審査基準において、報酬額が日本人と同等以上であることは、許可を得るための絶対的な必要条件の一つとして規定されています。
この「同等額以上」という基準は、単に最低賃金を超えていれば良いというわけではなく、その業界の相場や本人の能力に見合った額であることを意味します。

例えば、プロ野球選手を招聘する場合に、日本人選手と比べて明らかに低い年俸を提示していれば、それは興行ビザの趣旨に反すると見なされます。
モデルのケースにおいても、拘束時間や撮影件数に対して支払われる報酬が極端に少ない場合は、活動の実態が不透明であるとして厳しく追及されます。

報酬の支払いは、原則として日本国内の招聘機関や契約先から直接行われることが求められ、その支払能力も審査の対象に含まれます。
赤字が続いている企業や、設立直後で十分な資金繰りが証明できない団体が招聘元となる場合、高額な報酬を支払う能力がないと判断される恐れがあります。

そのため、申請時には報酬の根拠となる契約書の写しを提出し、そこに含まれる諸手当やボーナスの内訳までも明確にしておくことが望ましいです。
また、現物支給(住居の提供など)を報酬の一部として計算する場合は、その評価額が適正であることを合理的に説明しなければなりません。

実務上よく問題になるのは、活動が不定期で報酬が歩合制になっているケースであり、この場合は最低保証額の設定が重要になります。
「仕事があれば支払う」という不安定な契約形態では、日本での安定した生活が保証されていないと判断され、不許可になる可能性が高まるからです。

招聘側の体制と活動スケジュールから見る申請の信実性

興行ビザを取得するためには、外国人本人だけでなく、受け入れる側の企業や受け入れ体制が整っていることも不可欠な要素です。
具体的には、過去に外国人雇用に関するトラブルを起こしていないか、あるいは興行を運営するための適切な人員を確保しているかが見られます。

スポーツの試合会場や撮影スタジオ、あるいは興行が行われるイベント会場の概要を、図面や写真を用いて詳細に説明する準備が必要です。
もし、活動場所が全国にまたがる場合は、いつ、どこで、どのような活動を行うのかを記した詳細な「活動スケジュール表」の提出が求められます。

このスケジュール表は、単なる予定の羅列ではなく、移動日や休息日を含めた現実的な内容でなければ、審査官に不信感を与えてしまいます。
特に、興行ビザで入国しながら実際には観光を目的としているのではないかという疑念を払拭するためには、ビジネスとしての密度を証明することが大切です。

また、招聘機関が過去に興行ビザでの受け入れ実績がない場合、審査は通常よりも慎重に進められ、追加の資料提供を求められるケースが目立ちます。
初めて外国人を招聘する団体は、自社の事業内容がいかに興行と密接に関わっているかを、会社案内や実績を証明する書類を通じて丁寧にアピールすべきです。

興行ビザは、許可までの期間が比較的短いとされる一方で、提出書類の不備による差し戻しや不許可が非常に多いという側面を持っています。
一貫性のない説明や、裏付けのない実績アピールは逆効果となるため、事実に基づいた論理的な申請書類を作成することが、プロの招聘を成功させる唯一の道です。

当事務所では、スポーツやエンターテインメント業界の特殊性を深く理解した上で、個別の事案に応じた最適な申請をご提案しております。
お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

本間 隆裕のアバター 本間 隆裕 行政書士

シキサイ行政書士事務所 代表。
外国人の在留資格(VISA)申請を専門に、就労ビザ、特定技能ビザ、興行ビザ、永住許可申請などのサポートを行っています。

行政書士事務所・行政書士法人にて計7年間勤務し、700件以上の在留資格関連案件に携わってきました。
企業と外国人双方の立場を理解したうえで、制度だけに頼らない、実情に即したサポートを心がけています。

外国人が日本で安心して働き、生活できる環境づくりに貢献することを大切にしています。

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